鬼無庭園美術館Gallery Hooks
計画地は、高松市内の西方に位置し、田園風景が多く残る土地で、東に峰山・小山が繋がり、西には袋山・勝賀山、南には讃岐山脈があり、北は瀬戸内海に繋がる平野部にあります。ここは、古代には豪族が栄え神楽が残っています。桃太郎の伝説の町と知られており、昨今は、盆栽産地の町として全国に広まりつつある町です。
この建物は、ニューヨークで絵を学んだ画家であるクライアントの依頼により建築を行いました。暮らしながら、油絵や写真を見せるプライベートギャラリーです。外部の人が、周辺環境を感じながら、ゆったりとした時間と共に、絵のある暮らしをイメージできるようになっています。
建築計画にあたり、時間をかけて敷地や周辺地区を調査し、敷地の記憶を考慮して計画をおこないました。敷地の南側に住居・アトリエがあり、北側には第1次世界対戦の終結した年(1918年)に竣工した和風建築の母屋がありました。当初、敷地は主にみかん畑で「温州みかん」・「はっさく」・「ポンカン」をはじめ多くの種類の柑橘類が植えられていました。このみかんの木を一部残し、母屋を繋ぐ通路を建築の内部に取り込みプランニングを行いました。
建築の全体構成としては、1階は、南側の枕木を敷きのアプローチから、展示室を兼ねた風除室から入り、収蔵展示室を巡るように光井戸のある回遊式展示室と個室等があります。そして東のトンネル通路を挟み、外部収納、外部階段、一般トイレと施設利用者や、外部作業を行った時に利用できるシャワーを設けた車椅子対応洗面・トイレがあります。明るい日差しが注ぐ内部階段から2階に上がるとバルコニーのある広いダイニング・キッチン、そして階段を少し登ると寝室に利用する和室があり、畳を取り外し収納することができます。
屋上には、トンネル状の展示通路があり、南側にはアトリエ越しに田園地帯につながる風景が広がるバルコニー、北は藤棚のある中庭から母屋に繋がっています。
絵画は生活の場を暖かく豊かに彩ります。そして、日々の環境・感覚で見え方も変化して行く。ここでは、住宅的なスケール感があり、絵画・写真共に暮らす体感が出来ます。この場が様々な地域の人と繋がり、アートをより身近なものとして感じてもらい、このゆっくりと時間が流れ、讃岐らしい田園環境に少しばかり身を置いてほしいと考えています。